「緊急連絡先をお願い」と言われたら、どこまで引き受けることになる?

友人やパートナーから、こんなふうに頼まれることがあります。
「入院するときの緊急連絡先に、あなたの名前を書いてもいい?」
大切な人からの頼みなら、力になりたいと思うでしょう。一方で、「病院から連絡が来たら、必ず駆けつけるの?」「入院費まで払うことになる?」「手術の同意を求められたらどうしよう」と、不安になる人もいるかもしれません。
まず知っておきたいのは、「緊急連絡先」と「保証人」は同じではないということです。ただし、書類の内容や、相手との間でどんな約束をしたかによって、引き受ける役割は変わります。
名前を書く前に、何を頼まれているのかを確かめておきましょう。
「緊急連絡先」は、何をする人?
病院や施設が緊急連絡先を聞くのは、本人の体調が急に変わったときなどに、本人と連絡を取ったり、本人の状況を知る人へ連絡したりするためです。
ただ、「緊急連絡先」という言葉だけで、具体的な役割が全国一律に決まるわけではありません。
厚生労働省のガイドラインでは、医療機関が「身元保証人・身元引受人等」に期待する役割として、緊急時の連絡、入院中に必要な物品の準備、入院費、退院支援、亡くなった後の遺体や遺品の引き取りなどを挙げています。つまり、書類に「緊急連絡先」と書かれていても、病院側が別の役割を想定している場合があります。何を求めているのか、病院に確かめることが大切です。
連絡を受けることと、駆けつけることは別
緊急連絡先になると、本人の体調変化や入院について電話を受ける可能性があります。しかし、連絡を受けることと、いつでも病院に行くことは別の約束です。
仕事中や遠方にいるとき、夜間、体調が悪いときなど、すぐに動けない場合もあります。連絡がつかないときに誰へ連絡するのかも、本人と病院に伝えておくと安心です。
入院中の衣類や日用品の準備、退院時の付き添い、部屋の片付けなども、緊急連絡先になっただけで自動的にすべて引き受けることになるわけではありません。頼まれたことは、できることとできないことを分けて伝えましょう。
たとえば、次のように確認できます。
「電話には出られるようにします。ただ、仕事や距離の都合ですぐに病院へ行けないことがあります。私に何を頼みたいのか、病院にも確認しておきたいです」
入院費を払う責任まで負うの?
緊急連絡先になっただけで、本人の入院費を当然に支払う義務が生じるわけではありません。
ただし、書類に「保証人」「連帯保証人」などとして署名する場合は、話が変わる可能性があります。民法では、保証契約は書面、またはその内容を記録した電磁的記録によってしなければ効力が生じないとされています。書類の表題だけで判断せず、本文に「本人が支払わない場合に代わって支払う」などの約束が含まれていないか確認してください。
署名を求められたら、次の点を確認しましょう。
- 自分は「緊急連絡先」なのか、「保証人」なのか
- どの費用を、どの範囲まで負担するのか
- 支払いの上限や期間は決まっているのか
- 保証契約に関する書類へ署名する必要があるのか
内容がわからないまま、その場で署名する必要はありません。書類を持ち帰って確認したいと伝えて構いません。
医療行為の同意を求められたら?
緊急連絡先や身元保証人になったからといって、本人に代わって手術などの医療行為に同意する権限が自動的に生じるわけではありません。
厚生労働省のガイドラインは、身元保証人などの第三者に医療行為への同意権限があるとは考えられない、と整理しています。本人が意思を伝えられる場合は、本人の意思を確認することが基本です。本人が意思を伝えられないときの対応についても、緊急連絡先の人が単独で決めるのではなく、医療機関に相談してください。
本人がどんな医療を望んでいるかを知っているなら、その内容を医療機関へ伝えることはできます。ただし、「本人の希望を伝えること」と「本人に代わって同意すること」は区別して考えましょう。
亡くなった後のことまで、引き受けるの?
病院や施設から、亡くなった後の遺体・遺品の引き取り、葬儀の手配、部屋の片付けなどを頼まれることがあります。しかし、それらも「緊急連絡先」という名前だけで、すべて引き受ける約束になるわけではありません。
本人が亡くなった後に、誰が何をするのかは、元気なうちに確認しておきたいことの一つです。遺体の引き取りや葬儀、住まいの片付けなどを頼まれても対応できない場合は、最初から本人に伝え、別の人や仕組みを考えておきましょう。
引き受ける前に、本人と確認しておきたいこと
「いいよ」と返事をする前に、本人と病院・施設に次のことを確認してみてください。
- 連絡が来るのは、どんなときか
体調の急変、入院、退院など、連絡の範囲を確認します。 - 連絡を受けた後、何を頼まれるのか
本人への連絡だけか、病院への訪問や物品の準備も含むのかを聞きます。 - すぐ動けないときは、誰に連絡するのか
予備の連絡先を本人と決めておきます。 - お金の負担を求められていないか
緊急連絡先とは別に、保証人としての署名を求められていないか確認します。 - 退院後や亡くなった後の対応まで頼まれているか
どこまでなら引き受けられるか、具体的に話し合います。 - 自分が対応できなくなったとき、どうするか
転居や病気などで連絡を受けられなくなった場合の変更方法を確認します。
厚生労働省のガイドラインも、緊急連絡先として求める役割を明確にし、引き受ける人へ説明することを示しています。頼まれた人が、内容を十分に知らないまま何でも引き受ける必要はありません。
断る場合も、曖昧にせず伝えて大丈夫
友人やパートナーを大切に思っていても、すべての対応を引き受けられるとは限りません。難しいことを曖昧にしたまま引き受けると、本人も、頼まれた人も、いざというときに困ってしまいます。
たとえば、次のように伝えられます。
「あなたの力にはなりたいと思っています。ただ、入院費の保証や、必ず駆けつける約束はできません。連絡を受けて、できる範囲で対応する役割なら引き受けられます」
または、
「今の私には、その役割を引き受けるのは難しいです。病院の相談窓口や地域の支援先にも相談して、ほかの方法を一緒に探しませんか」
病院から「保証人がいないと入院できない」と説明された場合は、何のために、どの役割を担う人が必要なのかを確認し、医療ソーシャルワーカーなどの相談窓口につないでもらいましょう。厚生労働省は、身元保証人等がいないことだけを理由に医療機関が入院を拒否することについて、通知を出しています。
大切なのは、名前を書くことより「約束の中身」
緊急連絡先を引き受けることは、友人やパートナーを支える大切な行動です。ただし、名前を書いたからといって、保証人、医療の同意者、身の回りの世話をする人、死後の手続きをする人をすべて引き受けるわけではありません。
「どんな連絡なら受けられるか」「どこまでなら動けるか」「何はできないか」を、本人や病院と共有しておきましょう。引き受けられる範囲をはっきりさせることは、相手を突き放すことではありません。いざというときに、二人とも困らないための準備です。
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